2025.05.25
労働基準法における「労働者」の判断基準 約40年ぶりに見直しの議論
◆研究会の目的
厚生労働省は、5月1日に「第1回 労働基準法における「労働者」に関する研究会」を開催し、労働者性の判断基準の在り方などの検討を開始しました。この研究会では、「労働基準関係法制研究会報告書(令和7年1月8日公表)」において、労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60年)の作成から約40年が経過し、働き方の変化・多様化に必ずしも対応できない部分が生じており、この間に積み重ねられた事例・裁判例等を分析・研究し、学説も踏まえながら見直しの検討をすることや、国際的な動向も視野に入れながら総合的な研究を行うことの必要性について指摘がなされ、同省において専門的な研究の場を設けて総合的な検討を行うべきこととされました。
◆検討事項
この研究会では、次の事項について調査・検討を行うこととされています。
①労働基準法上の労働者性に関する事例、裁判例等や学説の分析・研究、プラットフォームワーカーを含む新たな働き方に関する課題や国際的な動向の把握・分析
②労働基準法上の労働者性の判断基準の在り方
③新たな働き方への対応も含めた労働者性判断の予見可能性を高めるための方策
◆「労働者」の判断基準
現在、労働基準法上の「労働者」に当たるか否かについては、以下の2つの基準で判断されることとなっています。
①労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか
②報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか
この2つの基準を総称して「使用従属性」と呼ばれています。
近年、配達員やアイドル、劇団員、英会話講師等が労働者として認められる裁判例があり、この研究会の議論により条件がどのように見直されるのか、今後の動向が注目されます。
職場における熱中症対策の強化について
令和7年6月1日より、暑さ指数(WBGT)28以上または気温31度以上の環境下(屋外含む)で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業が見込まれる場合、熱中症のおそれがある労働者を早期発見し、連絡できる体制を整備することを事業主に義務付けました。
WBGTとは、日本語では「湿球黒球温度」と訳されます。 これは 単なる気温とは異なり、人体が受ける暑さの影響を総合的に表す指標です。 気温に加え、「湿度」「輻射熱(日差しの強さ)」「風通し」などを含めて計算されるため、体感的な暑さをより正確に反映できます。
労働時間とは
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者 の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間が労働時間になります。そのため、次の①から③のような時間は、労働時間として扱わなければなりません。
ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評 価される時間については労働時間になります。
なお、労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定め のいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に決まります。また、客観的に見て使 用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、またはこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されることになります。
ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付 けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃 等)を事業場内において行った時間
イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、 労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の 指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
協調性のない社員
ねぎし事件
最高裁は、平成29年7月4日、協調性・適格性のない社員の解雇を有効と判断した東京高裁判決(平成28年11月24日)を支持しました。
営業部の正社員である従業員(以下「X氏」)の協調性欠如を理由に普通解雇を行った事案です。X氏は、同僚やパート職員に対し、命令口調で怒鳴ったり、無視を繰り返すなどの行為をしていました。これにより、同僚から強い不満やストレスが寄せられ、精神的な健康問題が発生するなど、職場環境が著しく悪化しました。
会社は再三にわたり注意や警告を行いましたが、X氏の態度は改善されませんでした。最終的に、会社はX氏を解雇しました。X氏は妊娠を告げた直後に解雇されたことから、妊娠を理由とする解雇であると主張しましたが、裁判所は会社の対応に合理性があると判断しました。
解雇有効性のポイント
・職場環境を著しく悪化させ、業務にも支障を及ぼす程度の問題行動があること
・会社が再三にわたり注意や警告を行ったにもかかわらず、態度が改善されないこと
・会社の規模や状況により、配置転換などの対応が困難であること
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