2025.07.25
令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況
「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、迅速に解決を図るための制度で、「総合労働相談※1」、 都道府県労働局長による「助言・指導※2」、紛争調整委員会による「あっせん※3」の3つの方法があります。
※1 「総合労働相談」 都道府県労働局、労働基準監督署、駅近隣の建物など379か所(令和7年4月1日現在)に、あらゆる労働問題
に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応している。 なお、平成28年度から、都道府県労働局の組織見直しにより「雇用環境・均等(部)室」 が設置され、これまで「雇用均等室」で対応していた男女雇用機会均等法等に関しても一体的に労働相談として対応することになったため、それらの相談件数も計上されている。
※2 「助言・指導」 民事上の個別労働関係紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことで、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度。助言は、当事者の話し合いを促進するよう口頭または文書で行うものであり、指導は、当事者のいずれかに問題がある場合に問題点を指摘し、解決の方向性を文書で示すもの。
※3 「あっせん」 都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度。
総合労働相談コーナー
令和6年度総合労働相談件数(120万1,881件)
うち、法制度の問い合わせ(81万4,454件)
労働基準法等の違反の疑いがあるもの(20万7,619件)→労働基準監督署、公共職業安定所、雇用環境・均等部(室)へ取り次ぎ
民事上の個別労働関係紛争相談(26万7,755件)
内訳 ①いじめ・嫌がらせ(54,987件)
②自己都合退職(41,502件)
③解雇(32,059件)
労働局長による助言・指導
申出件数(8,865件)
内訳 ①労働条件の引き下げ(1,103件)
②いじめ・嫌がらせ(960件)
③自己都合退職(859件)
処理件数(8,664件) 助言・指導の実施(8,256件)
取り下げ(241件)・打ち切り(139件) その他(28件)
紛争調整委員会によるあっせん
申請件数(3,866件)
内訳 ①解雇(792件)
②いじめ・嫌がらせ(716件)
③雇止め(433件)
処理件数(3,782件)合意の成立(1,143件)
取り下げ(159件)・打ち切り(2,465件) その他(15件)
※4 「民事上の個別労働関係紛争」 労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(労働基準法等の違反に関するものを除く)。
※5 令和4年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行に伴い、同法に規定する職場におけるパワーハラスメントに関する相談については同法に基づき対応されるため、「総合労働相談」のうち「法制度の問い合わせ」や「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として計上され、「民事上の個別労働関係紛争(のいじめ・嫌がらせ)」の相談件数には計上されていない。同じく、同法に規定する紛争について、その解決の援助の申立や調停の申請があった場合には、同法に基づき対応している。
ポイント
イ 総合労働相談件数は高止まり。助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数は前年度より増加。
総合労働相談件数は120万1,881件で、5年連続で120万件を超え、高止まり
ロ 民事上の個別労働関係紛争(※4)における相談では「いじめ・嫌がらせ」(※5)の件数が引き続き最多。
「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は、54,987件(前年度比8.5%減)で13年連続最多
ハ 民事上の個別労働関係紛争における相談、助言・指導の申出、あっせんの申請の全項目で、「労働条件の引下げ」の件数が前年度から増加。あっせんの申請においては「解雇」が最多となった。
「労働条件の引下げ」の相談件数は、30,833件(前年度比2.0%増加)、助言・指導の申出は、1,103件(同7.8%増加し最多)、 あっせんの申請は、399件(同5.0%増加)「解雇」のあっせん申請は、792件(前年度比0.1%減少。最多)
労働新聞(実務相談Q&A)
Q アルバイトに残業を命じようとしたところ、労働条件を通知した際に明示した時間数を超えるおそれが出てきました。ふと疑問に思ったのですが、正社員の採用時には時間数を明示していなかった気がします。アルバイトには明示が必要なのでしょうか。
A 法定の明示事項でない
短時間労働者や期間の定めのある労働者に明示すべき労働条件は、いわゆる通常の労働者と基本的に相違ありません。ただし、労基法15条に基づく事項以外に、昇給や退職手当、賞与の有無のほか、相談窓口の明示が必要です。
共通の明示事項に、所定労働時間を超える労働の有無(労基則5条)があります。アルバイトらに対し、事業主はできるだけ所定労働時間を超えないよう努める必要があり(平19・10・1厚労省告示326号)、労働条件のモデル通知書には所定外労働の時間数を書く欄が設けられています。なお、記載要領では、時間数は、労基法により義務付けられた事項ではないとしています。就業規則と異なる労働条件を合意していた部分は、合意が優先するとする労契法7条のただし書きにも留意が必要でしょう。
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